株式会社バイウィルは、カーボンクレジットを軸に4つの事業を展開する企業。同社は、長年にわたるブランドコンサルティングの経験を活かし、近年ではパーパスの策定・浸透やサステナビリティの自分ごと化を高める社内浸透施策など、SDGsやサステナビリティ推進に関するニーズにも対応してきました。
そして2023年、同社はブランディングとサステナビリティ・脱炭素推進を掛け合わせる事業展開へと舵を切ります。それに伴い、ブランドイメージを一新し、メッセージをより効果的に発信するためにウェブサイトの全面リニューアルが必要となりました。
本プロジェクトでは、サイトの構築期間が1ヵ月とタイトな中、「新しいバイウィルをどのように視覚的に表現するか」「どのようなトーンで伝えるか」という課題に対し、迅速かつ戦略的なアプローチが求められました。今回は、同社マーケティング 部長の折舘さんと木村さんに、リニューアルに至る背景やプロセスについて詳しくお話を伺いました。
日本の脱炭素・カーボンニュートラル実現を支援
—バイウィル社の事業内容について教えてください。
折舘氏:弊社は、脱炭素・カーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)の実現に向け、4つの事業を展開しています。 1つ目に企業や個人、自治体などの脱炭素に向けた取り組みを「カーボンクレジット」に換える手続きを、一貫して支援する「環境価値創出支援事業」、2つ目に企業の状況を踏まえ、費用対効果の高いカーボンクレジット・証書の活用を提案し、調達を代行する「環境価値提供事業」、3つ目に3つ目に「脱炭素」や「カーボンオフセット」の前提となる、環境ビジョンやGX戦略の策定を支援する「脱炭素コンサルティング事業」、4つ目にパーパス・ビジョンの策定や環境ブランディングなど、サステナビリティが重要視される現代のブランド創りを支援する「ブランドコンサルティング事業」です。カーボンクレジットを軸にして「創る」「使う」「学ぶ」「伝える」の4つの領域をワンストップでサポートさせていただいております。
(バイウィル社の4つの事業)
中でもメインとなるのが、カーボンクレジットの創出から販売までを完全成功報酬モデルで支援する「環境価値創出支援事業」です。
(環境価値の創出から販売までサポートする環境価値創出支援事業)
—カーボンクレジットとは具体的にどのようなものでしょうか。
折舘氏:カーボンクレジットとは、温室効果ガスの削減・吸収活動によって生じた削減量・吸収量を販売・購入することができる仕組みのことです。国や自治体、特定の機関により、削減量・吸収量がクレジットとして認証されると、売買取引が可能となります。
(カーボンクレジットの仕組み)
たとえば、ある企業が森林経営を通じてCO2の吸収を促進した場合、認められた吸収量に応じてカーボンクレジットが発行されます。このカーボンクレジットは、自助努力をしてもCO2排出量を削減しきれない他の企業が購入して、排出量を相殺するために使用できるのです。
現在、国内の大企業や自治体の多くは、2050年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げています。しかし、自社の努力だけでは目標達成が困難なケースも少なくありません。 自社の取り組みで50万トンのCO2排出量を削減できたものの、カーボンニュートラルまでにはさらに10万トンの削減が必要だったとします。この場合、10万トン分のカーボンクレジットを購入することで、目標達成したと見なされるのです。
そして、このカーボンクレジットという仕組みの最大のポイントは、「環境価値と経済価値が循環することによって、日本全体の脱炭素化と地域活性が同時に進んでいく」ということです。例えば、地方で森林経営を行っている森林組合や林業会社がクレジット化に取り組むことによって、CO2吸収がより促進され、全国各地で脱炭素化が進んでいく。そして、そのクレジットを売却した資金によって、更なる森林経営への投資や雇用創出が進み、産業・地域の活性化にも繋がっていくのです。
木村氏:カーボンクレジットに対する潜在的な需要は大きい一方で、現状では十分な供給が確保されていません。私たちは、この需給ギャップに着目し、カーボンクレジットの創出に注力しています。
たとえば、日本で認証されているカーボンクレジットである「J-クレジット」において、2030年までに国が目標として掲げる発行量は年間1500万トンです。しかし、プライム市場に上場する大企業の排出量を足し合わせるだけでも、年間数億トンにのぼります。、もちろん、排出量のすべてをJ-クレジットで埋め合わせるわけではないですが、現在の供給量では需要に追いつかないというのは間違いありません。 そのため、私たちはカーボンクレジットの創出と販売を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。
折舘氏:私たちにとって、カーボンクレジットを購入する側と創出する側、そのいずれもがお客様となります。購入する側は大手企業や大手企業のサプライヤーが多く、たとえばApple社はグローバルサプライチェーンに対してカーボンニュートラルを達成するように要望しています。
(Apple、グローバルサプライチェーンに対して2030年までに脱炭素化することを要請)
このように大企業と取引をする企業もまた脱炭素を進めなければいけない時代となっており、カーボンクレジットの買い手となっています。今後はグローバル企業やプライム上場企業の要請により実質的な義務化が進んでいくと予想されています。一方、カーボンクレジットの創出側となるのは、森林を適切に経営管理をしている地方自治体、また、省エネ設備を導入する個人や法人など多岐に渡ります。
サステナブルな未来を見据えた事業展開の決意
—プロジェクトの背景と目的について教えてください。
折舘氏:弊社は長年、企業のブランディング支援を手がけてきました。しかし近年は、SDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティ(持続可能性)への関心の高まりを受け、パーパスの策定・浸透や、社員一人ひとりがサステナビリティを自分事として捉えるための社内施策など、新たなニーズが増えてきました。
こうした潮流を踏まえ、私たちは、ブランディングとGX(グリーントランスフォーメーション=環境に配慮した事業への転換)を掛け合わせた、新しい事業モデルへと舵を切ることを決意したのです。 新しい事業展開に伴い、私たちは自社のブランドも刷新する必要に迫られました。新しいバイウィル社として、お客様にどのような価値を提供し、どのようなイメージで認知していただくか。そのためには、ウェブサイトのデザインやトンマナ(語調や表現の仕方)も一新する必要があったのです。
(折舘さん 株式会社バイウィル マーケティング部長)
— HubSpotを導入された背景を教えてください。
木村氏:弊社ではもともと数年前から、営業やマーケティングに必要な機能が1つのプラットフォームに統合され、他の社内ツールとの連携がスムーズに行える点を評価してHubSpotを導入していました。 ウェブサイトの構築もCMS Hub (※2024年4月に「Content Hub」としてリニューアルローンチ)を活用し、サイト運営からマーケティング施策の実行、営業への引継ぎまで、一連のマーケティング活動を一元的に管理している状態です。
すでにウェブサイト構築、マーケティング活動、CRMなど多岐にわたる場面でHubSpotを活用していたため、今回のサイトリニューアルにおいてもHubSpotを引き続き活用することが自然な選択でした。
(木村さん 株式会社バイウィル マーケティング)
折舘氏:また、急遽新社名・新事業のお披露目のスケジュールが決まり、そこに合わせるというタイトなスケジュールでプロジェクトを進める必要がありました。構築から公開まで、わずか1ヶ月ほどでサイトを一新しなければならなかったのです。 こうした状況下で新たなシステムを導入し、ゼロからサイトを構築するのはリスクが高すぎます。そこで私たちは、既存のHubSpotをベースに、必要な改修を加えながらリニューアルを進めることにしたのです。
— 100社をパートナーに選んだ理由を教えてください。
折舘氏:今回のウェブサイトリニューアルでは、パートナー選びが重要でした。単にHubSpotを使ってサイトが構築できるだけでなく、弊社の事業内容やブランディングの方向性を深く理解してくれるパートナーを探す必要があったからです。加えて、SEO対策などのデジタルマーケティングの知見も欠かせません。 選定にあたっては、以下の3点を重視しました。
- HubSpotを活用したウェブサイト構築の実績と理解度
- 弊社のビジネスモデルや事業内容に対する理解度
- デジタルマーケティング、特にSEO対策に関する専門性
これらの観点から、HubSpot公式パートナーの中から数社にお問い合わせし、お話をお伺いしました。その中で100様のご提案で際立っていたのは、弊社の事業に対する理解の深さです。 たとえば、カーボンクレジット創出支援サービスのページでは、弊社がクライアント企業の脱炭素活動をサポートしている様子が、直感的に伝わるイラストを制作いただきました。このビジュアル一つで、私たちの支援内容が具体的にイメージできるのです。 こうした適切なイラストを作成するためには、事業を深く理解することが不可欠だと思います。100様のデザイナーさんが、弊社のビジネス・事業内容を細部まで正確に把握した上で、最適なビジュアルを提案してくれました。
(バイウィルのビジネスモデルをイラストで体現したサービスページ)
約1ヶ月というタイトな納期で進めるウェブサイト刷新
—プロジェクトはどのように進められたのでしょうか。
折舘氏:プロジェクトは大きく2つのフェーズに分けて進めました。まず、最も急を要する課題は、約1ヶ月後の新社名・新事業のお披露目にサイトリニューアルを間に合わせることでした。そこで、フェーズ1ではトップページを中心に、必要最低限のサイト改修を行うことにしました。
具体的には、新しいトップページの作成に加え、サイト全体のトーンやスタイルを調整。また、約200ページにおよぶサイトのカラーを、従来のオレンジ基調から新ロゴに合わせたグリーン基調のデザインへと刷新しました。
加えて、新たに展開するGX(グリーントランスフォーメーション)事業のサービスページを1ページ作成し、トップページから従来のコンサルティング事業とGX事業の両方を訴求できるようにしました。このGX事業のページは、当時のウェブサイトのテンプレートに沿って設計されており、新事業の内容を端的に伝えることを意識しました。 本来であれば、ウェブサイト全体の大規模な改修には社内の複数のメンバーが関わるものですが、弊社マーケティング部は少人数体制だったため、限られたリソースと時間の中でいかにスムーズに進めるかが重要でした。
とはいえ、100様の手厚いサポートがあったからこそ、このプロジェクトを成功に導くことができたのだと思います。特に、GX事業のサービスページの制作にあたっては、100様にデザインやコーディングを一手に引き受けていただき、本当に助けられました。おかげさまで、限られたマンパワーの中でも、会社の新たなスタートにふさわしいウェブサイトを期日までに公開することができました。
谷脇:お披露目の期日が決まっていたため、スケジュールは非常にタイトでした。3月のプロジェクト開始から4月1日の公開まで、わずか1ヶ月しかありませんでした。その中で、トップページのリニューアルとGX事業のサービスページ制作を同時に進めるのは、なかなかのチャレンジです。
それでも折舘様と弊社の制作チームが一丸となって、フェーズ1の改修を遂行することができました。 ただ公開直後のサイトは、バイウィル社の新体制や新事業内容を十分に反映できているとは言えない状態でした。そもそも今回のプロジェクトは、事業の方向性を大きく転換するという、バイウィル社にとって重大な節目に立ち上げられたもの。新しい事業の軸となるサービスを具体的に打ち出すためには、社内での十分な議論と検討が必要不可欠です。
(谷脇 光太 株式会社100(ハンドレッド)取締役 プロジェクト責任者)
折舘氏:事業転換の真っ只中だからこそなんとかお披露目には間に合わせたものの、いち早く新しい事業について深いレベルで情報収集を行い、ビジネスの勢いを創っていきたいと考えていました。そこでフェーズ2では、各事業の詳細なコンテンツ拡充とともに、会社全体の見え方も刷新することを目指しました。
まず、トップページを全面的に刷新し、新しいブランドや事業を体現するデザインと内容に一新しました。社内での十分な議論を経て、新しい提供価値を決定し、それに基づいて大幅なリニューアルを行いました。
(フェーズ2にて公開されたバイウィル社ウェブサイトのトップページ)
次に、会社概要ページを更新し、新しい企業像を明確に伝えるコンテンツを作成しました。サービスページについては、4つの主要サービスを並列に紹介し、各サービスの詳細を分かりやすく説明するページを制作しました。 それらに加えて、採用ページと英語サイトページの作成も実施しました。
主要なターゲットであるお客さまはもちろん、投資家、パートナー、採用候補者など幅広いステークホルダーに向けて、バイウィル社の提供価値をより効果的に伝えるようにしました。各ページは、それぞれのステークホルダーのニーズを考慮し、バイウィル社の特徴や強みが明確に伝わるよう設計しています。
(フェーズ2で作成された英語ページ)
また、フェーズ2とほぼ同時並行で、新サービスを訴求するランディングページも3本制作し、広告出稿の準備も整えました。 振り返ってみると、フェーズ1で必要最低限のリニューアルを行い、フェーズ2でも段階的に先行的にコンテンツを拡充していったことで、滞りなくマーケティング活動を継続することができたのだと思います。
(実際に作成した環境価値取引に関する広告配信用のランディングページ)
木村氏:事業を理解してくださっているからこそ、100様とのコミュニケーションは円滑で、結果として複雑なサービス内容も視覚的にわかりやすいデザインとして形にしていただいています。最近制作していただいた「地域脱炭素推進コンソーシアム」ページもそのよい例です。このページでは、カーボンクレジットがどのように地域経済を活性化させるかという仕組みや、コンソーシアムの組織体制を、非常にわかりやすい図で表現していただきました。 こうしたデザインは、弊社の事業を直感的に理解してもらうための重要なツールになり、社内外からもお褒めの言葉をいただいています。
(2024年8月に公開した新ページ地域脱炭素推進コンソーシアムのページ)