事例紹介

ナーチャリング施策でリードの引き上げ数262%増! HubSpotで実現したクラッソーネのマーケティングDX事例

作成者: 渋谷 真生子|Oct 8, 2024 4:44:48 AM

株式会社クラッソーネは「街の循環再生文化を育む」をビジョンに掲げ、解体工事会社と施主をつなぐプラットフォームを運営。同社は毎月数千件というリードを獲得していましたが、一方でその多くが何らかの理由で離脱するという課題に直面していました。

この課題を解決するため、クラッソーネはリードナーチャリングに着目。各リードにとって適切なタイミングで、適切な情報を提供するため、HubSpot Marketing Hubの導入を決定。カスタマージャーニーに合わせたシナリオを設計し、ユーザーの属性や行動に応じて最適化された情報を自動配信できる仕組みを構築しました。

HubSpotを選定した理由、どのように課題解決に取り組んだのかを知るため、同社のコーポレート・コミュニケーション部部長の岩﨑 朋幸さんとtoC事業部マーケティングチームマネージャーの佐藤 俊輔さんにお話を伺いました。

リードの多くが離脱する状況を改善するため、ナーチャリングの必要性に迫られる

—クラッソーネ社の事業内容について教えてください。

佐藤氏:弊社は「街の循環再生文化を育む」というビジョンを掲げ、主に解体工事のサプライチェーンマネジメントを行っています。簡単に言えば解体工事をしたい方を集客し、解体工事会社や残置物整理会社などのパートナー企業にマッチングするビジネスモデルです。

また、令和3年度の国土交通省「空き家対策モデル事業」に採択されて以降、全国の自治体と連携して空き家対策の取り組みを行っています。

 

解体工事は一生に一度の買い物で、業界構造として多重下請け構造になっていることもあり、不安を抱えるお客様が多いのが課題でした。弊社はその中間に入ることで、お客様に最も安い、最も安心、手間要らずの解体工事を提供することを事業として行っています。

現在は入り口のマーケティング領域だけでなく、施工会社の営業から施工管理、産業廃棄物処理までを一貫して担う「フルバリューチェーンDX」にチャレンジしています。その中でDXを推進し、職人の経験をデジタルソリューション化することで、より良い解体工事の提供を目指しています。

どのような課題を抱えていたために、リードナーチャリングの必要性を感じたのでしょうか。

岩崎氏:当時、Google、Yahoo!、Facebook等の主要広告媒体に広告を出すことで、毎月数千件のリードの獲得ができていました。その一方で多くのリードが離脱する課題に直面していました。一概にリードと言っても検討段階が多岐にわたる状況で、適切なナーチャリング活動が行えていませんでした。獲得したあとに見込み顧客へと引き上げるための施策に課題があったのです。

佐藤氏:弊社のサービスでは、まず潜在顧客に向けてWeb広告を配信し、興味を持った方に資料請求やお問い合わせをしていただきます。そこで獲得したリード情報を元に、メール配信やインサイドセールス部門がコンタクトを取るのですが、すぐに解体工事を発注したい方もいれば、まだ検討段階の方もいらっしゃいます。必要に応じたナーチャリングと情報提供が重要でしたが、獲得した全てのリードに対して網羅的にコンタクトするのは現実的ではない。

そこで、ユーザーのステージに合わせ、ニーズが顕在化しているリードには人が対応し、そうでない人にはどのような情報が必要かを精査して提供する、自動的に振り分けて配信できるMA(マーケティングオートメーション)ツールが必要だと感じていました。

直感的な操作で簡単に使いこなせるHubSpotを導入

—HubSpotの選定理由を教えてください。

岩崎氏:以前はメール配信サービスを導入していましたが、カスタマージャーニーの各ステージにおけるユーザーニーズを把握せずに、全てのユーザーに同じ内容のメールを配信していました。

実はそのメール配信サービスでも細かくセグメントすることは可能でしたが、リスト作成の工数が非常にかかっていました。当時のメール配信担当者が退職したことをきっかけに、メール配信ツールの活用もしばらくストップしていました。

他ツールとの比較検討を行った結果、「ユーザーインターフェース」、「機能のカバー領域」、「CRM」3つの理由からHubSpotを選びました。HubSpotは直感的に使えるかつマーケティングツールの中でも必要な機能が揃っていたため将来業務の幅が広がっても使い続けられると考えました。また、元々自社で開発したCRMシステムの老朽化により切替を検討する中で、CRM機能を持つHubSpotはとても魅力的でした。

岩﨑 朋幸 さん 株式会社クラッソーネ コーポレート・コミュニケーション部 部長

佐藤氏:私もHubSpotの直感的な操作性を評価しています。簡単な操作でさまざまな機能を使えるため、新たなアイデア創出にもつながっている点がいいですね。たとえるなら、HubSpotはおもちゃのように使えるツール。使えば使うほど、できることの幅が広がっていく。そこからインスピレーションを得て、次々とマーケティング施策を打ち出せるのは素晴らしい体験ですね。もちろん使いこなすにはそれなりの勉強が必要ですが。

加えて、100社の手厚いサポートも助かりました。マーケティングチームのリソースが限られる中で、100社には導入初期の重要な局面で手厚く支援いただきました。前職で使用していたツールではカスタマーサポートのレスポンスが悪く、課題解決に時間がかかっていましたが、100社にはSlackで気軽に相談できたため、スピーディーに課題解決ができました。

リードの検討状況に合わせてパーソナライズ化したナーチャリングを実施

—プロジェクトではどのような取り組みを行いましたか?

遠藤:HubSpot Marketing Hubの導入支援においては、まず解体工事を検討するお客様のペルソナ設定とカスタマージャーニーの可視化から始めました。お客様の属性や抱えている課題、意思決定プロセスを詳細に分析し、カスタマージャーニーマップを作成。それぞれのステージで必要となる情報やアプローチ方法を明確にしたのです。

そこから導き出されたインサイトを元に、ナーチャリングシナリオを設計。各ステージで最適なコンテンツを自動配信できるよう、シナリオを可視化しながら組み立てていったのです。

岩崎氏:プロジェクトの中で大きく3つの取り組みを行いました。1つ目は、解体費用のシミュレーターで獲得したリードをスムーズに見積り依頼に進めるためのナーチャリング施策です。一連の連載メールを作成し、情報の非対称性を埋める過程で見積り依頼へと引き上げるシナリオを組みました。

2つ目の取り組みとして、離脱したリードに対する再アプローチのシナリオを組みました。こちらは、解体費用シミュレーターや見積り依頼フォームで一度コンバージョンしたものの、2か月間検討が中断してしまったリードを再活性化させるためのシナリオです。

佐藤氏:私がマーケティング担当になってからは、エントリーフォームの内容に基づき初回接触時のメールを分岐させる仕組みを構築しました。お客様が入力された解体工事の希望時期や動機に応じて、最適なメールを自動送信するようにしたんです。

佐藤 俊輔 さん 株式会社クラッソーネ ToC事業部 マーケティングチーム マネージャー

岩崎氏:最後3つ目の取り組みですが、マーケティング領域にあわせて、インサイドセールスでのHubSpotの活用も進めました。セグメントごとにインサイドセールスにリードをパスする条件設定を実施しました。

これまでの運用では、Excelでリードを管理し、複数のタブを比較して重複を排除するなど、手作業での効率の悪い管理が行われていました。またリストの上から順にコールをかけていく方式では、成約可能性の高いリードを優先することが難しかったため、インサイドセールスのリソースも逼迫する中で、取りこぼしなども発生していました。

そこで、HubSpotでの管理を導入し、特定のセグメント条件に一致したリードをインサイドセールスにパスし可視化するフローを実施しました。これにより、優先度の高いリードを自動的に特定し、インサイドセールスが成約可能性の高いリードに対して優先的にアプローチできるようになりました。インサイドセールスの限られたリソースを最大限に活用し、より効率的な運用が可能になったと考えられます。

遠藤:クラッソーネ様のプロジェクトにおいては、HubSpotの機能を十分に活用しながらも、できるだけシンプルな設計を心がけました。マーケティングオートメーションを始めたばかりの段階では、複雑になりすぎないよう、まずは大きな成果が見込める施策に絞って着手することが重要だと考えています。

遠藤 祐太朗 株式会社100(ハンドレッド) 取締役 プロジェクト担当者

—プロジェクトを進める中での課題や苦労した点は何ですか?

岩崎氏:リードナーチャリングの難しさを改めて実感しました。メールマーケティングも簡単ではありませんが、新しいツールを使いこなすには当然覚えなければなりません。形骸化しないように定着できるような状況をつくる、運用面のハードルはクリアできつつあります。社内スタッフのツールへのアレルギー反応もなく、活用が広がっている手応えを感じています。

単にマーケティングオートメーションを導入するだけでは不十分で、いかに的を射たシナリオを設計するかが肝心だと痛感しました。リードの反応を見ながら、どんなコンテンツを届けるのか、どんなタイミングで届けるのか。それを常に最適化し続けなければならない。簡単ではありませんが、手応えも感じ始めているので、さらにブラッシュアップしていければと思っています。

そんな中で、HubSpot導入による業務効率化はありがたく思っています。マーケ部門のリソースが限られる中でも、少数精鋭でPDCAを回し続けられるのは、HubSpotのおかげだと思います。

佐藤氏:まさにその通りですね。大きなリソースを割けない状況は悩ましいところですが、その中でもできることはたくさんある。取り組みを進める中で、改善すべき点や課題感は着実に溜まってきています。

顕在化したリードを確実に見積りにつなげながら、業務効率も大幅に向上

—定量的な成果を教えてください。

岩崎氏:HubSpot導入前は担当者の退職によりメール配信が止まっており、リードナーチャリングを通じた月間の見積り依頼数はわずか数件にとどまっていました。

しかし、HubSpotを導入したことで大きく引き上げることができました。導入初月で今までの約4倍を超える見積り依頼の獲得を達成しました。実際、ナーチャリングを開始する前の6ヶ月間と、開始後の6ヶ月間のリードから引き上げた見積り依頼数を比較してみると、平均値で262%も増加していたのです。

工数の面でも、これまで担当者が手作業で行っていた作業を自動化できたことで、削減効果がありました。リストの整理やメール配信などの作業は、大きく削減できました。人的リソースを創造的な業務に振り向けられるようになったことも大きいと感じています。

—社内文化みたいなところで変化はありましたか?

佐藤氏:社内文化の観点で言うと、社内のあちこちでHubSpotを活用する動きが出てきました。インサイドセールスでもHubSpotを活用し、見積り依頼後に連絡が途絶えたユーザーを特定し、メールで再アプローチを行いました。すると、結構な数のお客様が再び弊社のマイページにアクセス。そのまま契約に至ったケースもありました。

また、従来は担当者が4つほどのスプレッドシートを見ながら各自の基準でスコアリングをし、架電をする顧客の優先順位をつけていましたが、これをHubSpotに一元化しました。そうすることで、属人的な判断に頼る必要がなくなったので、業務の標準化にもつながっています。さらに、4つものスプレッドシートを行き来する必要がなくなったぶん、インサイドセールスはコア業務である架電に集中できるようにもなりました。これも、HubSpotによる業務効率化の成果だと感じています。

—今後の展望について教えてください。

佐藤氏:創業以来、私たちは「マーケティングDX」の領域で、解体工事会社と個人施主とのマッチングサービスを展開してきました。しかし現在は、その先にある「フルバリューチェーンDX」へと舵を切っています。

具体的には、解体工事における全工程、つまり現地調査から積算、産廃処分場の選定に至るまでの一連のプロセスに、テクノロジーを全面的に導入することで、業務の合理化と効率化を推進しているのです。

現在、このフルバリューチェーンDXは東海4県でサービスを展開しており、着実に成果を上げつつあります。ここで確立したビジネスモデルを基盤に、今後は関東をはじめとする他のエリアへの横展開を図っていく計画です。

 

ゴールは「解体工事業界のDX化」ですね。現場の職人さんの経験や勘をデジタルの力で活用できるようにする。それによって、誰もが簡単に質の高い解体工事を依頼できるようにする。そんなプラットフォームを全国規模で実現したいと考えています。

そのためには、お客様が解体を考えた際にクラッソーネを一番初めに思い出してもらいたいです。たとえば、潜在的な段階で低コストでリードを蓄積し、顕在化した際に自社を思い浮かべてもらう。このような仕組みをHubSpotで構築できればと考えています。

岩崎氏:私は今マーケティング部を離れて、コーポレート・コミュニケーション部にいますが、B to Bマーケティングの支援も行っています。HubSpotの活用領域としては、BtoB向け、すなわち大手不動産営業に向けたメールマーケティングを行っています。不動産会社の場合、土日が商談となるため、月曜日に御用聞きのメールを配信し、ワンボタンで見積り依頼ができる施策を実行しています。クラッソーネは自治体や不動産会社など、多様なステークホルダーの方々とコミュニケーションが必要になので、HubSpotを上手く活用して顧客接点を広げていきたいと考えています。

マーケティングオートメーションはあくまでもスタートラインに過ぎません。本当の意味での顧客視点のアプローチを実現するには、組織のあらゆる部門がデータでつながる必要があります。マーケティング、営業、カスタマーサクセスまで、HubSpotをデータ基盤として、シームレスにデータを連携させる。そうすることで、マーケティングの成果を事業成長に直結させられるはずです。

※記事中の部署名、役職名等は取材時のものです。