「おもてなしを科学する」を理念に掲げ、データ活用、デジタルツールの導入、Eコマース支援の3本柱でデジタルマーケティングをサポートする株式会社イー・エージェンシー。柱の1つであるデジタルツールの導入支援事業では、9つのSaaS型の自社プロダクトを保有し、さまざまな企業のBtoBマーケティングを支えています。
各プロダクトの顧客管理を担うのは、クラウド事業本部カスタマーコミュニケーション部。もともと新規顧客の管理にはHubSpotを活用していましたが、既存顧客の管理は従来のスプレッドシート活用から移行できずにいました。中でも予実管理は、プロダクトのLTV算出や施策立案などに欠かせない要素ですが、社員がデータを手動で入力していたため、顧客数の増加に伴う業務量過多とヒューマンエラーの発生が課題でもありました。
そこで、HubSpotの製品であるOperations Hubを使って手動業務を自動化ができないか、と100社に相談がありました。そこから計9プロダクトのうち、8プロダクトの予実管理を自動化するためのプロジェクトが始動。
今回イー・エージェンシーの担当者である長沼さんと対馬さんにインタビューし、100社に依頼をした背景やプロジェクト始動後の心境を伺いました。
コーポレートサイト
https://www.e-agency.co.jp/
サービスサイト(さぶみっと!)
https://www.submit.ne.jp/
株式会社イー・エージェンシー
事業本部 カスタマーコミュニケーション部
部長 長沼 彩花 さん(左)
リーダー 対馬 いつか さん (右)
株式会社100
RevOps事業部 シニアコンサルタント
田邊 慎太郎
―まず、イー・エージェンシーの会社概要や今回のプロジェクトと関係する事業・プロダクトの内容を教えてください。
長沼彩花さん(以下、長沼):今回100様にお世話になったのは、クラウド事業本部です。当事業部は「ユニークで、使いやすく、手頃なプロダクト」をコンセプトに、メール配信サービスや多言語変換サービスなど計9プロダクトを展開しています。
対馬と私が所属するカスタマーコミュニケーション部では、受注後の顧客管理を担当しております。
―顧客管理業務の中で、どのような課題を抱えていたのでしょうか?
長沼:主に予実管理について課題を抱えていました。これまではスプレッドシート上で管理し、データはすべて担当者が手入力していました。しかしどのプロダクトも顧客数が膨大で、担当者に大きな作業負荷がかかるだけでなく、ヒューマンエラーもたびたび起こっていたのです。入力ミスがあると未来予測もずれてしまうため、精度の高い管理方法を必要としていました。
対馬いつかさん(以下、対馬):私が担当するプロダクトには約1700社の顧客企業がいらっしゃいます。管理上、新規アカウントや解約数の週1回のチェックに30分ほど要していました。さらに売上が確定した時点で、各アカウントの支払額の照合や訂正に、月に一度1時間半から2時間ほどかけていました。
―新規・解約のチェックに30分×4週間だと月2時間、加えて売上確定後の金額照合に月2時間だと、月に計4時間ほどの定型業務なんですね。この業務はプロダクトごとに発生するものですか?
そうですね。あくまでも私が担当しているプロダクトの話に過ぎないので、ほかではさらに細かく管理している可能性もあり、8つのプロダクトで単純換算すると30時間超。部署全体でこの業務にかなり多くのリソースを割いていたと思います。
―ほかにも課題を感じていた点はありましたか?
長沼:HubSpot自体は、顧客数の増加に伴い3年程前から導入し、新規顧客の管理に活用していました。ただ既存顧客にも適用できる仕組みにしなければ、予実管理をはじめ、LTVの予測や単価アップのプロセスを追求することはできません。これには当社の取締役からも強い要望が出ていました。やはり経営陣が組織に関する意思決定や経営判断を下す時、サービスの売上予測は重要な要素となります。ダッシュボードを一目見ただけで誰もが売上予測を把握できるよう、可視化の側面からも管理方法の改善が必須だと感じました。
―そこからHubSpotのオプションの活用と100に導入サポートを依頼すると決めたのですね。
長沼:はい。実は予実管理の自動化は、数年前に構想が挙がったものの、当時のHubSpotの機能では複数プロダクトを横断した顧客管理を実現することは難しく、一度は諦めていました。しかし2022年、HubSpotの新サービス「Operations Hub」がリリースされたのを知り、再度自動化を実現できる可能性が出てきたのです。私たちの知見だけでは導入は困難と判断し、以前からお付き合いのあった100様のお力を借りることにしました。
図:HubSpot Operations Hubで実現した売上管理パイプライン
―イー・エージェンシーからの依頼に対し、田邊さんはどのような印象を抱きましたか?
田邊 慎太郎(以下、田邊):まず長沼さんと対馬さんが作られた、業務課題や実現したい顧客管理の方法がギッシリと書かれた仕様書に驚きました。枚数にして30ページほどでしょうか。エンジニアの半田と共に一刻も早く仕様書を読み解き、イー・エージェンシー様が思い描く管理方法の実現を目指そうと、プロジェクトがスタートしました。
長沼:製品数が多いこともあり、かなり細かい内容の仕様書をお渡ししました。3カ月くらいは、関係者を集めて定例会を開き、各プロダクトの特徴やパターンに合わせた管理方法を考えていましたね。かなりボリュームのある仕様書だったにも関わらず、100様はキャッチアップが早く、真剣に向き合ってくださったので、最初から安心できたのを覚えています。また、導入に至るまで複雑な工程を踏むであろうと予測していたため、分からないことがあった際に相談しやすい体制や雰囲気を作ってくださったことも感謝しています。
―仕様書の段階で、実現が難しそうな要望はありましたか?
田邊:Operations Hubの機能によって多くのご要望は解決できると思いました。ただ、HubSpotをはじめとするSaaSツールは、システムとして機能の限界や仕様の制限があることも事実。そこを突破する技術力というのはある程度必要になるとは感じました。その点、今回プロジェクトに入ったエンジニアの半田は、8年ほどHubSpot領域に関わってきた技術者です。お客様の理想にできる限り近づけるためには、単にHubSpotの機能だけに頼るのではなく、エンジニアのスキルも、成功の鍵になりますからね。
―本格的にプロジェクトが始動し、どのように開発を進めていったのでしょう?
田邊:おそらくOperations Hubで8つものプロダクトを取り扱い、細部にわたりきっちりと作り込む事例は、日本国内では初だと思います。ですから、どのような使い方ができるか長沼さんや対馬さんにイメージしていただけるよう、分かりやすいプロトタイプを半田に作ってもらうことを最優先しました。まずは1プロダクトで土台の見本をお見せし、その後7プロダクトに展開。各プロダクトによって管理のフローも変わってきますから、開発過程で仕組みを整えていくアジャイル型で開発を進めていきました。
対馬:初めてプロトタイプを見せてもらった時、「あの仕様書でここまで作ることができるのか」ととても驚いたのを覚えています。まとまりのない仕様書から、情報を的確に取捨選択し形にしてくださったんだと感動しました。
長沼:私たちがイメージした通りの管理画面のプロトタイプを見て、純粋にうれしかったです。同時に、ここまできたらやるしかない、と再度気持ちも引き締まりました。その後も少しずつ完成に近づいていく様子を見ていると、感慨深くなりますね。
―開発中はどのようにコミュニケーションをとっていましたか?
対馬:チャットツールを使ってやり取りをしているのですが、レスポンスがとても早いですし、ちょっとした疑問にも毎回素早く回答してくださるので助かりました。また、私自身の中で言語化ができないような、ふんわりとしたイメージをうまく伝えられない時もありました。そうした抽象的な相談の本質もくみ取って、常に当社にとって最適な方法をご提案してくださったことで、いいシステムになるという確信を持てました。
田邊:HubSpot側もすべての仕様を細かくオープンにしているわけではありませんし、新機能もどんどん追加されています。ですので実装をしてみて初めて知った仕様や制約が生じるのは仕方ありません。そうした情報をしっかりとキャッチアップし、そのつど対応しながらお客様のご要望や疑問に応えることが重要だと考えています。
―2023年春頃にリリース予定とのことですが、イー・エージェンシー社内での反応はいかがでしょうか。
対馬:まだ運用前なので、正直不安を感じているメンバーもいて、「操作方法を間違えたら」「リカバリーはどうすればいいのか」といった反応もあります。私も少なからず不安を持っていましたが、細かい手順マニュアルを100様からいただいてからは安心感を持つことができました。マニュアルを見ながらシステムを触ってみると操作も簡単だったので、マニュアルを共有すればほかのメンバーの不安も払拭できると思います。
長沼:新しいシステムの導入に不安や心配はつきものです。運用開始以降のイメージがつかめていないことも、不安の要因だと思います。ですのですぐに自動化へ移行するのではなく、現在のスプレッドシートと並行運用しながら新システムに慣れていくことが必要です。慣らしの期間を経て、メンバーみんなが大丈夫だと確信を得たら、自動化一本で運用していく予定です。
田邊:システム導入に不安を感じるお客様は少なくありません。そんな時、たとえに出すのが、そろばんから電卓への移行。そろばんでは見えていた答えを出すプロセスが、電卓では分からなくなることで「本当に合っているのだろうか」という不安が生まれるのです。HubSpotを使うことで利便性は高まる一方、エクセルやスプレッドシートの表計算などから放れる怖さがあるのも理解できます。だからこそ検証や分析を幾度も行い、使用者が信頼を寄せられるシステムを作ることが私たちの使命。運用を続ける中でミスや不具合のなさを実感していただけるよう、正確なシステム開発に努めていきたいです。
―最後に、リリースを控えた今、みなさんの心境を教えてください。
長沼:Operations Hubの導入で予実管理の仕組みを大きく変えることができそうです。LTVや解約予測が容易になったり、今見えていない数字が明確になることで、会社としても新たな取り組みへと動き出すきっかけになると思います。レポートの見える化が実現すれば、分析業務などの時間短縮も可能となるだろうと、期待感も高まっています。
100様には今回のプロジェクトでは大変お世話になりましたが、今後もぜひHubSpotのサポートをお願いしたいです。これから当社のプロダクト数が増えることもあれば、プロダクト内のプランが追加される場合もあるでしょう。すると管理方法やシステムも変更する必要が出るかもしれません。そんな時、当社のことを一番に理解してくださっている100様に頼むことができたら、やはり安心感が違います。何かあればぜひ相談させてください。
対馬:スプレッドシートの構造上、プロダクトを担当するほかのメンバーと同時に入力すると、数字の見落としや自分の作業がスプレッドシートに反映されないトラブルも発生していました。複数人でスプレッドシートを開くことは、リスクが高く非効率。そうした状況を打破し管理が少しでも楽になると思うと、リリースがとても楽しみです。
田邊:Operations Hub自体まだ多くの実績がなく、システム開発の過程で技術者の手が必要となるケースが多いです。プログラムを書ける人間がいれば技術的な難しさは乗り越えられるのですが、とはいえ言語のバージョンなど模索する部分が多いのも事実です。ですから既存のHubSpotの機能とOperations Hubをうまくマッチさせ、有効な手段を見つけていくことが重要となります。そのためにもHubSpotの知見を蓄積していく努力は続けていく必要があるでしょう。
HubSpotを扱う企業の先駆者として、今後も新たなソリューションを開拓していくつもりです。イー・エージェンシー様とは、リリース後もお付き合いをさせていただき、引き続きサポートをしていきたいと思います。
※記事中の部署名、役職名等は取材時のものです。