事例紹介

HubSpot活用で1,000万円以上の大型契約を獲得!アプローチ漏れゼロと工数10時間削減を実現した事例

作成者: 渋谷 真生子|Dec 19, 2024 5:24:27 AM

株式会社NOMALは、「チャレンジする人の背中を押す事業を創り続ける」というビジョンを掲げ、さまざまな事業を展開しています。中でも注力しているのが、企業のオフィスにアートを取り入れるウォールアート事業です。この事業では、オフィスの壁をキャンバスに見立て、アーティストが企業の理念やビジョンを表現するアートを制作し、空間を彩ります。

かつて、同社の営業活動は、代表の松本氏と副社長の平山氏の2人による人脈営業が中心でした。週に3回以上の交流会に参加し、1万件以上のコンタクトを獲得。案件の管理は、PCに標準搭載されているToDoリストを用いて手作業で行っていました。しかし、コロナ禍による対面営業の制限や、案件数の増加により管理が難しくなり、営業活動の効率化が急務となったのです。そこで、営業プロセスのデジタル化と一元管理を実現するため、2020年にHubSpotを導入しました。

HubSpot導入後、顧客情報の一元管理や効率的な日程調整が可能となり、インサイドセールスによる成果が飛躍的に向上しました。インターンのインサイドセールス担当者が、1,000万円以上の大型案件を受注するなど、導入後の効果は顕著です。

今回は、株式会社NOMALの代表取締役  松本 祥太郎さんと、HubSpot再設計プロジェクトを担当した株式会社100(ハンドレッド)のシニアHubSpotコンサルタント水野 信太郎にお話を伺いました。

アートの力で、働く人々のエンゲージメントを高める

御社の事業内容について教えていただけますか。

松本氏:弊社は、オフィスや公共空間への壁画導入をすることで、作品制作に挑むアーティストとの接点を生み出す事業をしています。オフィスアートは年々需要が増えており、素晴らしい連携アーティストも年々増え、公共施設からガラス面までさまざまなご要望にお応えしています。

(ウォールアート事業の説明図

依頼をいただいた際は、お客様の要望に合わせて300名以上のアーティストから最適な作家をご提案、チームとしてプロジェクトを運営し企画から納品までをワンストップで承ります。

なぜウォールアートなのかと思われるかもしれません。私たちは、ウォールアートは単なる装飾にとどまらず、企業のミッションや理念を視覚的に表現し、社員の意識に浸透させる強力なツールと考えています。

この事業は、海外でのオフィスにアートを取り入れる文化に着目し、日本でもその価値を広めたいという思いから2017年にスタートしました。まだ日本ではオフィスにアートを取り入れる文化が十分に浸透していませんが、私たちは「自身の感性を更新し、自由に活躍できる人を増やす」ことをビジョンに、今日もアートと日常が交差するシーンをつくり続けています。

実際に弊社が実施したアンケート結果では、70%近い方がオフィスに不満を持っており、「自社ならではの遊び心や個性を感じない」という項目を一番不満に思っている人が多いという結果となりました。「自社ならではの遊び心や個性を感じない」という項目を一番不満に思っている人が多いという結果となりました。

(オフィスデザインに関するアンケート結果

またウォールアートを通じて、企業の理念や価値観を社員に深く印象づけられるだけでなく、表現されたアートが社員同士のコミュニケーションを促進する効果もあります。とある調査では、アートによりコミュニケーションが進んだする社員が73%という結果となりました。たとえば、イントリックス株式会社様はビジョン・ミッションの浸透を目的に、社員様を巻き込んだウォールアートを新オフィスに導入されました。導入後は社員同士のコミュニケーションの活性化はもちろんのこと、お客様との会話のネタやウォールアートをきっかけにオフィス訪問にきていただく機会も増えたそうです。人との繋がりを引き寄せるオフィスの中心的な存在として活躍しています。

(実際に制作されたオフィスアート

コロナ禍で営業活動が停止。
HubSpot導入で1万件の眠っていたコンタクトを活用

御社がHubSpotを導入されたきっかけや背景について伺えますでしょうか。

松本氏:弊社がHubSpotを導入したのは2020年、ちょうどコロナ禍が始まった頃でした。それまで営業活動は、私と副社長の平山の2人で、人脈を頼りに案件を獲得するアナログなスタイルで行っていました。毎週3回以上の交流会に参加し、これまでに1万件以上のコンタクトを獲得してきました。しかし、その管理をMacのToDoリストで手作業で行っていたため、業務の急拡大に伴い対応しきれなくなってきたのです。

(当時松本氏が活用していたMacのTo Doリスト)

特に問題が表面化したのは、メンバーが増え、案件の引継ぎを行う際にスムーズに管理できないと感じた時や、私たちの人脈を十分に活かしきれていないことに気づいた時です。それまでは、すぐに案件につながる見込みの高い顧客にしかアプローチしておらず、1万件ものコンタクトの大部分は放置されていました。

さらに、コロナ禍による緊急事態宣言で対面営業が止まり、売上が急激に減少。この状況をきっかけに、属人的な営業手法から脱却し、これまでアプローチしていなかったコンタクトに対してナーチャリング活動を行う必要性を強く感じました。

そんな中、知人の経営者から勧められたのがHubSpotです。営業の見える化やオンライン化に役立つと聞き、すぐにデモを受けて導入を決めました。また、HubSpotを選択した理由として、複数のアポをこなすのが負担だったことが背景にあります。ミーティング調整機能を重視してツールを検討する中、CRM機能も欲しいと考え、その点でHubSpotが最も適していると判断しました。他のツールとの比較も行いましたが、使い勝手や機能のバランスから最終的にHubSpotを選んだのです。

当時、どのようにHubSpotを活用されていたのでしょうか。

松本氏:当時はCRMやMAの知識がほとんどなかったため、最初はHubSpotの機能の10%程度しか使いこなせていなかったと思います。しかし、導入直後からクライアントとのやり取りを一元管理でき、オンラインで商談のスケジュール調整ができるなど、すぐに多くのメリットを実感しました。

特に便利だったのはカレンダー調整機能です。1日に5つ以上のアポイントが入ることは珍しくなく、以前は日程調整に膨大な時間がかかっていました。しかし、HubSpotのミーティングリンクを使えば、お客様が私たちの空いている日程を選択して予約をすることで、メールのやり取りが不要になり、時間の大幅な節約につながりました。その結果、より多くのアポイントを負荷なく設定できるようになったのです。

(実際に活用されているHubSpotのカレンダー調整機能)

このように利便性を感じながらも、ウォールアート事業は商談から契約、キックオフミーティング、さらに施工までのプロセスが長いため、HubSpotだけで成約後の全てのプロセスを管理するのは難しいと思うようになりました。Notionで補完していましたが、情報が分散してしまうことは望ましくありません。

そこで柔軟にカスタマイズが可能と聞いていたSalesforceへ移行することを決めました。HubSpotの設定や運用は私が一人で担当していたので、Salesforceに移行しカスタマイズをしてもらうことが一番の近道に当時は感じたのです。しかし途中までSalesforceの設計を行いましたが、実際に導入し自身で操作してみると機能や操作が複雑で、弊社の事業規模には「Too Much」な機能が多いという印象です。カスタマーサポート体制も十分ではなかったので、最終的にはSalesforceの活用は中止し、改めてHubSpotに本格的に取り組むことにしました。

HubSpotのナレッジベースや御社の書籍である「HubSpot大百科」を参考にしながら、自社で設計と運用を進めてきました。しかし、まず私自身のリソースが不足していたこと、さらに何が問題なのか特定できず、書籍やFAQのどの部分を参考にすべきかがわからなかったことが課題でした。

たとえるなら、設計図のないまま家を建てているような状況です。全体の構造や理想の家の姿が明確でないまま、その場しのぎでトイレを追加したり、部屋を拡張したりしている感じでした。もちろん、このやり方では後々欠陥が生じるのは避けられません。

自社での運用には限界を感じ、より専門的な支援が必要だと判断しました。そこで、X(旧Twitter)でHubSpotに詳しい方を探していたところ、100の営業担当の鈴木さんが反応してくださり、HubSpotの再設計支援をお願いすることになりました。

(ご支援させていただくきっかけとなった松本氏のX投稿

それでは導入支援プロジェクトについてお聞かせください。

松本氏:プロジェクト開始時に、今回のプロジェクトをご担当いただいた水野さんに自分が目指している「適切な案件管理」の重要性をお伝えしました。私と平山がこれまで頭の中で案件管理をしていたため、情報が分散しがちという課題があったためです。そこで、案件の進捗や重要な情報を一元化・可視化することが急務だと考えていました。

また、先にお伝えしたようにアート制作では契約から納品までの期間がプロジェクトによって大きく異なり、1か月で終わるものもあれば1年以上かかるものもあります。このようにプロジェクトの長さが多岐にわたるため、従来の方法では売上の予測が困難でした。さらに、インサイドセールスを導入したこともあり、顧客へのアプローチの優先順位をつける必要がありました。

こうした要望をお伝えしたところ、水野さんはまるで家の設計図を書くように、私たちの業務フローを整理し、案件管理の枠組みを提案してくれました。そして、ミーティングを重ねる中で「ライフサイクルステージ」という概念を導入することになりました。

ライフサイクルステージという言葉をその時に初めて知りましたが、この概念を取り入れることで、プロジェクトの進行や顧客管理が整理され、効率的になりました。具体的には、案件ごとの進捗を管理しやすくなり、いつどのタイミングで売上が発生するのかが可視化できるようになったのです。水野さんがその設定や運用をサポートしてくれたので、安心してプロジェクトを進められました。

また、水野さんが全体のフレームを構築してくれている間、私はその邪魔にならない範囲で、自分の担当するタスクを進められました。これにより、プロジェクトを同時並行で進められたことが大きかったですね。

(松本 祥太郎さん 株式会社NOMAL 代表取締役 )

松本氏:こうした事前整理を通して、今後の認知拡大に向けた基盤が整ったと感じています。HubSpotは非常に便利なツールであり、機能や考え方をしっかりと理解すれば心強い味方となってくれます。今となればHubSpot導入当初、すぐに100さんにご支援をしていただいていたらよかったと感じますが、これからが本当の勝負ですね。引き続き、ここからさらに戦略的なアプローチを強化していきます。

(弊社のサービスをご利用いただいた松本氏のX投稿

本プロジェクトで大変だった点はありますか。

松本氏:水野さんが丁寧に対応してくださったおかげで、大きな困難はありませんでした。ただ、あえて挙げるとすれば「ペルソナの設定」が最も難しかったですね。

ウォールアート事業は市場規模が小さく、世間的な認知も低いため、どのようにして「ホットリード(自社に興味関心が高く、購買意欲の高い見込み客)」を定義するかに悩みました。ペルソナを絞りすぎると、SQL(営業担当に引き渡す見込み客)の数が少なくなってしまう一方、広げすぎると確度の低いリードが多くなってしまいます。これは今でも試行錯誤を繰り返しながら、最適化を目指している課題です。

現時点では、「問い合わせ」または「資料ダウンロード」に加え、「5回のメルマガを開封してくれた方」もしくは「セミナーに参加してくれた方」をホットリードとして定義しています。ただ、この定義がベストかどうかは、まだ検討の余地がありますね。

また、今回のプロジェクトは基本的に私が一人で担当しており、社内でのHubSpot設定や従業員へのトレーニングも行っています。社内展開用の資料作りに関しては、100のコンサルタントさんが準備してくれたものを活用したため大きな問題はありませんでした。

しかし、HubSpotの概念を社内に浸透させる部分では、かなりの時間と労力が必要でした。たとえば、「どういった目標を達成するためにこの自動化を設定しているのか」とか、「ナーチャリング施策をうまく動かすためには、正確なデータ入力が必要」といった基本的な部分の理解が必要です。この理解を社内全体に浸透させることは、今後も継続して取り組んでいく必要があります。

もう一つの課題は、ステップメールの配信が可能になったものの、そのメールコンテンツを制作するためのリソースが十分に確保できていないことです。現状は私と平山が移動中など、限られた時間を使ってコンテンツを作成しています。アイデアは多くありますが、それを形にするための時間やリソースが不足しているのが現状です。

さらに、100さんのサポートを受けてHubSpotに対する知識が深まり、さまざまな新しい試みを試したいという気持ちが高まっている一方で、それを実行に移すためのリソースが足りないというもどかしさを感じています。この点に関しては、今後の課題として取り組んでいきたいですね。

(水野 信太郎 株式会社100 シニアHubSpotコンサルタント プロジェクト担当者)

インサイドセールスではどのようにHubSpotを活用されているのでしょうか。

松本氏:インサイドセールスは、インターンの学生に担当してもらっています。HubSpotの活用により、顧客とのコミュニケーション履歴や、進捗が止まっている案件状況を確認できるため、より的確なアプローチが可能になりました。たとえば、顧客がどのタイミングでどのコンテンツに興味を持ったのか、どのメルマガを開封しているのかといったデータがHubSpot上で一目でわかります。

特にインターンの学生にとっては、私や平山が取得してきたコンタクトに対して、いきなり電話やメールをするのは大きなプレッシャーだと思います。しかし、HubSpotを使って事前に顧客の情報や今までのコミュニケーションの履歴を確認できることで、話す内容をパーソナライズでき、自信を持って対応できるようになりました。実際に、インターンの学生が1,000万円規模の大型案件を獲得した事例もあります。そのクライアント様は、毎回メルマガをしっかり読んでくれていたため、HubSpotの通知を活用して、メルマガが開封されたタイミングで即座に電話をかける戦略を立てていたそうです。実際に電話をしたところ、すぐにアポイントが取れ、その後、1,000万円以上の大型契約に結びつきました。HubSpotを活用したタイミングとデータに基づく戦略が、成功の鍵だったと言えます。

1,000万円の大型契約を実現!HubSpotで手探り営業から脱却し、アプローチ漏れを防いだプロジェクト管理

本プロジェクトの成果をお聞かせください。

松本氏:先ほどもお話したように、インサイドセールスがHubSpotを活用して顧客との過去のコミュニケーション履歴を確認し、タイミングを見計らって架電できるようになったことで、大型契約の受注に成功しています。今年だけで1,000万円の売上が見込まれ、来年にはさらに数千万円の売上を予定しています。

以前は、私たちが頭の中で顧客管理をしていたため、ホットリードがいてもアプローチを忘れてしまうことがありました。しかし、HubSpot導入後は、私も平山の担当する案件の進捗を簡単に確認し、アプローチを忘れた場合でも即座にフォローすることが可能になり、取引につながるケースが増えました。

また、完全な肌感覚にはなりますが、質の高いアポイントが増えたとも感じています。HubSpotを活用することで、お客様のメールの開封やページの閲覧など興味を持っているシグナルをキャッチしてアプローチを行えるようになりました。その結果、検討している、関心が高いお客様に適切なタイミングでのコミュニケーションを行えるようになったことが質の高いアポイントが増えた要因だと思っています。

ウォールアート事業は2017年に開始し、2020年にはコロナ禍の影響を受ける中でHubSpotを導入し、以降は同ツールを活用した効率的な営業およびマーケティング活動を展開しています。この取り組みを通じて、ウォールアートは徐々に社会的認知を広げつつあり、年間売上も着実に成長を遂げています。

(株式会社NOMAL ウォールアート事業の売り上げ推移)

個人的に嬉しいのは、全体会議でプロジェクト全体を俯瞰できるようになった点です。たとえば、「この案件は今月中に決まる予定だ」といったクローズ日を確認しながら、各プロジェクトの商談進捗を一目で把握できるようになっています。これにより、SQLから商談に進む際も、「この会社は今月アポを取りに行こう」と具体的な会社名ベースで戦略を立てられるようになりました。以前は、クロージングが難航する案件に対しても、個人の頭の中でのみ管理がされている状態だったので社内での話し合いがなかなかできなかったのですが、現在は明確なプランを立てられています。

水野:NOMAL様では、人的リソースや時間が限られている点も課題でした。そのため、問い合わせ内容に応じて後続の対応を自動で切り替えるワークフローを設定し、効率化を図っています。たとえば、「見積もりが欲しい」「話を聞きたい」といったホットな案件には、担当者のミーティングリンクを含む自動返信メールを即座に送信し、日程調整を促します。さらに、1営業日後にはフォローアップタスクが自動で作成され、Slackにも通知が飛ぶ仕組みを整えました。

一方、「資料が欲しい」といった比較的検討度合いの低いリクエストには、資料のダウンロードリンクを含めた自動返信メールを送り、1週間後に状況確認のタスクを自動で設定するプロセスを導入しています。

また、逆営業のような対応不要な問い合わせは自動的にレコードを削除し、リソースを無駄にしない工夫も行っています。このように、問い合わせの内容に応じた自動化によって、限られた営業リソースを最大限に活用できる体制を整えています。

 

今後の展望について教えてください。

松本氏:まずウォールアート事業をさらに大きく成長させたいと考えています。現在、日本にはウォールアートを専門とする会社が数社しかなく、これから間違いなく成長する分野です。その中で「ウォールアートといえばNOMAL」という認知を、この1〜2年のうちに確立したいと考えています。

すでに挑戦権は得ていると感じており、それを実現するためにHubSpotを活用して、世の中の多くの人にウォールアートの魅力を伝えていきます。現在、まだ市場の95〜98%の企業がウォールアートを知らないと感じているので、まずは接点を持ったことがある見込み客に対して個別にアプローチし、ウォールアートの良さを理解してもらうことを目指しています。

さらに、ウォールアート自体の魅力を社会全体に広めたいという思いもあります。極端な話、他のウォールアート企業に会社でウォールアートを導入しても良いというくらい、業界全体としてウォールアートの魅力や可能性を社会に普及させ、アーティストたちの活躍の場を広げることにもつなげたいと考えています。これが結果的に、ウォールアートを導入する企業の増加につながることを期待しています。

私たちはウォールアートが企業の課題解決に貢献できると確信しています。たとえば、オフィス空間にウォールアートを導入することで、社員同士のコミュニケーションが活性化し、より魅力的な職場環境が生まれるはずです。経営者の中には、リモートワークよりもオフラインで社員が顔を合わせて働くことを重視している方が多くいます。

自然に「出社したくなるオフィス」を作るために、ウォールアートは有効な手段だと思っています。今後は、この価値を多くの企業に広め、より多くの人にウォールアートの魅力を感じていただきたいと考えています。

※記事中の部署名、役職名等は取材時のものです。