事例・実績紹介
Case Study
パナソニック インダストリー株式会社

リード獲得数3.5倍 - パナソニック インダストリーがHubSpotで実現したデータ活用と営業・マーケティング強化事例

パナソニック インダストリー株式会社様

業種

電気部品・電子部品・制御機器・電子材料等の開発・製造・販売

従業員数

1000名以上

ご支援前の課題

・旧CMSの技術的な制約と即時対応の難しさ
・国内外担当者のスキル差によりコンテンツのリアルタイム更新が困難
・顧客データ数不足により、施策実行が限定的

ご支援後の成果

・顧客属性情報取得数の大幅増加
・質の高いリード数が3.5倍増加
・日本国内、グローバルでのCMS運用業務効率向上
・データを活用した顧客に寄り添った営業活動が可能に

パナソニック インダストリー株式会社は、「良い部品で良い商品を」という考え方のもと、産業・情報通信・車載といった幅広い分野に向け、最先端のデバイスを提供しています。同社は、変化の激しい市場環境に対応し、営業とマーケティングの連携を強化するため、従来使用していたCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)からHubSpot Content Hub(※2024年4月にCMS Hubからリニューアル)への移行プロジェクトを開始。

しかし、長年使用してきたCMSのページや機能をゼロから精査し直し、既存のページをスムーズに移行するのは容易ではありません。特に関連部門の調整や各担当者の要件を反映するプロセスには、確かな専門知識が求められました。こうした背景から、HubSpot Solutions Partnerである株式会社100(ハンドレッド)の協力を得て、効率的かつ的確な移行計画を進めました。

今回は、本プロジェクトに関わる課題や解決策、そして導入後の成果について、弊社のプロジェクト責任者が、パナソニック インダストリー株式会社のメカトロニクス事業部および産業デバイス事業部のデジタルマーケティング・コンテンツプロモーション担当の皆様にお話を伺いました。

グローバルのモノづくりの根底を支えるデバイス製造 

──まず、両事業部の事業内容について教えていただけますか?  

水崎氏:産業デバイス事業部では、「多様なデバイステクノロジーでより良い未来を切り開き豊かな社会に貢献しつづける」というビジョンのもと、「工場の省人化」「車載」「空調」の3つの領域でデバイスとソリューションを提供しています。拠点は世界77か所以上で、グローバルに開発・製造・販売を行っています。

私が所属するデジタルマーケティング課は、デジタルを活用してお客様にどのようにアプローチをし、弊社を知ってもらい、購買に繋げていくかを検討し、施策に落とし込みます。Webコンテンツを活用したお客様へのアプローチから、営業による商談化、最終的な購入までの一連のプロセスを、デジタルを活用して効率的に進める仕組みづくりを行っています。

千田氏:メカトロニクス事業部では、大規模なバッテリーを搭載する電気自動車に必要なEVリレーをはじめとする車載分野のほか、産業分野、ICTなどさまざまな業界・業種に必要とされるデバイスを開発・製造・販売しています。

私はメカトロニクス事業部と産業デバイス事業部の商品Webサイト(制御機器サイト)の運営を担当しています。実は、HubSpotを最初に導入したのも当事業部でした。制御機器は非常に専門性が高い製品のため、お客様に正確な情報を分かりやすく伝えることが重要です。

今回は産業デバイス事業部、メカトロニクス事業部が販売している数万点に及ぶ製品のサイトのリニューアルを私たちが担当することになりました。

パナソニック インダストリー株式会社の組織体制(パナソニック インダストリー株式会社の組織体制)

タイムリーな施策実行を阻む壁 - 旧CMSの限界と改善の必要性

──HubSpot Content Hub導入前はどのような課題を抱えていらっしゃいましたか?  

千田氏:私たちが直面していた課題は、大きく3点に分類できます。

まず1つ目は、CMSの技術的な制約です。当時、別のCMSを利用しスクラッチでWebサイトを構築しました。しかし、A/Bテストやアクセス解析にもとづいた改善を行うたびに開発が必要で、社内での即時対応ができませんでした。新しいランディングページ(LP)作成やフォーム項目の変更といった簡単な改修でさえ開発チームの関与や外部への依頼が必要で、施策の実施が遅れることが多かったのです。そのため、施策を迅速に反映するのが難しく、タイムリーな改善機会を逃してしまうことが頻繁にありました。

2つ目は、デザイン面での課題もありました。当時のWebサイトは機能的には問題がなかったものの、外見がやや時代遅れであると感じていました。私たちの業界では、信頼感や先進性を感じさせるWebデザインが重要と考えていましたが、当時のCMSのテンプレート更新の柔軟性が低いため、リソースを多く割かざるを得ない状況でした。その結果、急速に変化する市場や顧客ニーズに応じた対応が難しい状態でした。

大隅氏:社内担当者の多くはWebサイト編集の経験が少なく、小さな変更でも編集担当者への依頼が必要で、アイデアやコンテンツを即座に反映できませんでした。営業や商品担当者からも「現場の課題やニーズをリアルタイムで反映したい」という声が多かったのですが、スピーディーな対応ができず、もどかしさがありました。

千田氏:3つ目の課題として、営業とマーケティングの連携不足が挙げられます。従来のWebサイトでは顧客データの取得が不十分で、営業が適切なタイミングでアプローチする機会を逃していました。私たちの目指すデジタルマーケティングでは、顧客との接点を確保し、購買意欲が高まったタイミングで営業に引き継ぐことが重要です。そのため、営業とマーケティングの連携強化が急務と感じていました。

中澤氏:Webサイトを単なる製品情報の発信手段にとどめず、顧客接点を創出して営業活動に結びつけることを目指していました。しかし、従来のCMSではグローバル展開も視野に入れた各地域のカスタマイズが難しい状況でした。私たちにとって、顧客データの分析やタイムリーな更新、地域ごとに適応した運用が可能であることが重要でした。

──その中でHubSpot Content Hubを選択された理由は? 

千田氏:当社がHubSpotを導入した当時、日本ではまだMA(マーケティングオートメーション)ツールが普及していない時期でした。HubSpotのプラットフォームはマーケティングから営業、サポートまでを一貫して管理できるため、当社が抱えていた「既存CMSの技術的な限界」や「マーケティングと営業間の連携不足」を解決できると感じたことが導入の決め手です。

私自身、HubSpotには以前から注目しており、そのきっかけとなったのは『グレイトフルデッドにマーケティングを学ぶ(ブライアン・ハリガン、デイビッド・ミーアマン・スコット著)』という本です。HubSpotの顧客中心のマーケティングアプローチは、顧客との関係を最優先にし、長期的な信頼構築を目指す考え方で、デジタル時代において革新的でした。この文化に共感し、HubSpotが当社の目指す顧客体験の強化に合致していると確信したのです。

導入当初はMarketing Hubを活用し、開発の知識がなくてもLPやブログを簡単に作成できる点に大きな価値を見出しました。HubSpotのContent HubのEnterpriseプランが発表され、当社のように数万点以上の製品を提供するグローバル企業のニーズにも応えられると感じ、採用を決定しました。

中澤氏:これまで使用していたCMSは、「コンテンツ管理」に特化していましたが、当社が求める「リアルタイムの情報提供」や「MAおよびCRMとの連携」が不足していました。そのため、コンテンツのデータを営業やマーケティング施策に効果的に活用するのが難しかったのです。すでに当社ではMarketing HubとService Hubを利用し、顧客体験の向上に成果を上げていました。そのため、CMSもHubSpotに統一することで、一貫性のある顧客対応が可能になると考えました。

HubSpotのCRMを基盤とした統合型プラットフォーム

HubSpotのCRMを基盤とした統合型プラットフォーム

HubSpotはコンテンツの更新を手軽に行える環境を提供しているため、顧客への迅速かつ柔軟な対応が可能です。従来は小さな変更でも開発チームに依存していましたが、HubSpot導入によりマーケティング担当者でも即時に修正や改善を行い、PDCAサイクルを迅速に回せるようになります。この「即時対応力」は、従来のCMSにはないものであり、機動的なマーケティング施策を実行する上で重要なポイントです。

顧客にとって最適なタイミングで信頼できる情報とサポートを提供できるWebサイトへ

──リニューアルプロジェクトでは具体的に何を行ったのでしょうか。

谷脇(ハンドレッド):今回のプロジェクトは、CMSを従来のシステムからHubSpot Content Hubへ移行するという大規模な取り組みです。パナソニック インダストリー様はグローバルにビジネスを展開されているため、移行作業は日本を含む5リージョン、総計何十万ページに及ぶ内容となります。

構築したWebサイトには数万に及ぶ商品情報を公開しているのですが、商品マスタデータをHubSpotと連携させて情報をWebサイトに表示するように連携システムを開発しました。商品マスタデータが更新されるとHubSpotで構築されたWebサイトにも情報が反映されることで、常に最新の情報をお客様に届けることが可能になります。

マスタデータをHubSpotに連携させて表示している品番詳細ページの例

(マスタデータをHubSpotに連携させて表示している品番詳細ページの例)

 

また、グローバル展開における大きな課題が多言語対応でした。HubSpot Content Hubは多言語ページの作成に対応しているので、海外展開されている企業様によく選ばれているのですが、パナソニック インダストリー様の場合は各地域での独自性も重要でした。そこで、地域ごとの独自性を保ちながら効率的な管理ができるように、5つのリージョンそれぞれにHubSpotアカウントを設定する方法を採用しました。

ただ、HubSpotには元々アカウント間でコンテンツを共有する機能がありません。そこで私たちは独自の「コンテンツコピーシステム」を開発しました。これにより、例えば日本で作ったコンテンツを他の地域でも簡単に活用できるようになり、海外の担当者の方々は翻訳や編集作業に集中できる環境が整いました。

水崎氏:実は、今回のCMS選定で一番重視したのが、現場の担当者が手軽にコンテンツを作って公開できることでした。お客様に日々最新の情報をお届けするには、使いやすさはもちろん、効率的な運用の仕組みが欠かせません。100社には、単なるCMS導入に留まらず、将来の運用まで見据えたシステムを作っていただき、本当に感謝しています。

──大規模なプロジェクトだったと思いますが、推進にあたっての課題はありましたか?

杉下氏:従来のCMSを長年使用してきたので、どの情報をそのまま活かし、何を刷新すべきかの判断が難しかったですね。関係者も多岐にわたるため、誰に何を確認すればよいのかが分かりにくい面もありました。既存の商品に関する情報を可能な限り活用したいという想いもあり、その見極めに苦慮した部分が大きかったです。

中村氏:技術面での課題は大きかったです。どの機能をどのように導入し、どの程度の工数が必要かを見極めるのは容易ではありません。また、実装の難易度を正確に把握するためには、専門的な知識も必要で、どこまで内部リソースで対応できるのか判断に時間がかかることもありました。

さらに、当社は大阪と愛知、100社は東京や北海道と複数拠点から参加するプロジェクトメンバーで、リモートによるコミュニケーションを主軸にして、効率的にプロジェクトをすすめるように推進していきました。

谷脇(ハンドレッド):確かに、地理的な距離はプロジェクトマネジメント上、予想以上に大きなハードルでした。しかし、この制約があったからこそ、私たちはより綿密なコミュニケーション計画を策定するきっかけになったとも感じています。

進捗状況や課題、次のステップを明確に共有するため、アジェンダの事前作成や日々の進捗確認を徹底し、関係者全員が同じ方向に向かって進めているかどうかを確認する仕組みを構築しました。このような仕組みがあったことで、地理的な制約があるにもかかわらず、一体感を保ちながらプロジェクトを推進できたのではないかと思います。

リード獲得数は3.5倍。グローバル規模で業務効率を改善

──実際にリニューアル後、どのような効果が表れていますか? 

千田氏:リニューアル後、最も顕著な成果として、顧客データの取得数が増加しました。メカトロニクス事業部では顧客データの取得をアップさせ、顧客ニーズをさらに把握したいと考えておりました。今回のリニューアルでは取得情報の定義を行い、HubSpot入力フォーム機能を活用し顧客情報の取得を始めました。新機能として、ダウンロード時に顧客情報を取得できるフローを組み込むことで、データの取得機会が劇的に増加したのです。これにより、精密なターゲティングやフォローが可能となり、顧客との関係構築が進んでいます。

パナソニック インダストリー 制御機器Webサイト

リニューアル後の制御機器サイト

パナソニック インダストリー 制御機器Webサイトリニューアル

従来のWebサイトとリニューアル後のWebサイトの比較

水崎氏:産業デバイス事業部でもリード獲得の成果が明確に表れています。リニューアル後、月間のリード獲得数が倍増しましたが、これが単なる「数」の増加にとどまらず、質にも貢献しています。たとえば、Content Hubで構築されたWebサイトからマーケティング領域のMarketing Hub、営業領域のSales Hubまでを一気通貫で連携することで、どの経路で商談が生まれ、どのアプローチが最も効果的であるかを正確に追跡できるようになりました。この可視化により、効率的に商談を生み出すための戦略設計が可能となり、営業チームの活動をデータに基づいて最適化できるようになっています。

2024年7月31日新Webサイト公開後、増加したリード獲得数

(2024年7月31日新Webサイト公開後、増加したリード獲得数)

田村(ハンドレッド):御社のHubSpot Content Hub実装は、ページ数や機能の複雑さにおいて、HubSpot社グローバル全体でも最大規模の一例となっています。この事例はHubSpot本社でも注目されており、特にエンタープライズ向けの機能開発に対して強い影響を与えています。実際に、御社のフィードバックを参考にした機能の改善や新機能の研究や話し合いが進行中です。御社の実装事例は、HubSpotのエンタープライズ戦略におけるモデルケースとなっています。

大隅氏:運用面でも、リニューアルによって大きな変化が生まれました。これまでは見えなかったお客様の行動が可視化されるようになり、たとえば「このコンテンツを閲覧しているお客様には、こちらの情報が有益であるはずだ」といった形で、ニーズを予測したアプローチが可能になりました。また、インサイドセールスチームが必要に応じてすぐにフォローできる体制が整ったため、お客様とのコミュニケーションスピードも格段に向上し、お客様への提供価値が高まっています。

──海外展開についてはいかがでしょうか?  

中村氏:海外展開に関して、今回のリニューアルによる効果は当初の予想を超えるものでした。特に台湾拠点では、これまでWebマーケティングのリソースが不足しており現地独自のWebコンテンツ制作は困難でした。しかし、Content Hub導入後は「自分たちで簡単にコンテンツを管理・更新できる」という意識が現地メンバーの間に根付き始め、現地のマーケットや施策に合わせて独自のコンテンツを積極的に制作する動きが見られるようになりました。

さらに、これに伴ってお客様の行動データが日々蓄積され、現地のデータを活用して戦略的にマーケティング活動を展開しています。

杉下氏:また、HubSpotの直感的な操作性が海外現地でのコンテンツ更新に非常に役立っています。 現在では即時に現地メンバーでも更新ができる体制が整いました。各拠点での運用スピードが格段に向上し、各市場のニーズに応じた柔軟な対応が可能になりました。

──今後の展望についてお聞かせください。 

千田氏:私たちは現状に満足することなく、Webサイトの改善サイクルを継続的に進める体制を築いていきます。データを基に仮説を立て、実際の施策で検証を繰り返すPDCAサイクルを細かく回すことで、長期的な成長に向けた改善を積み重ねていきたいと考えています。この「昨日より少しでも良くする」という姿勢の積み重ねが、最終的には大きな成果につながると確信しています。

また究極の理想として、お客様がWebサイトを回遊いただくだけで、お客様の課題が把握でき、課題解決に導くことができるような仕組みを構築したいですね。Webサイトの運営は営業との連携とCRMの強化が主な目的であり、適切な情報の取得と戦略的なデータの活用がその基盤となります。

水崎氏:現在、パナソニックグループでは、自社向けの生成AIを使って、従業員の積極的な生成AI活用を促進しています。今後、お客様へのお役立ちのために、Webサイトの商品情報を構造化して、AIで活用できる状態にすることが非常に重要だと考えております。

お客様からの製品に関する質問に迅速に回答し、最適な製品やソリューションをご提案するパーソナライズド体験が提供できるよう、社内に蓄積されたノウハウやWebサイトの情報と連携した包括的な知識ベースの構築を目指したいです。

田村(ハンドレッド):最近のHubSpotのアップデートでは、Service Hubの機能が強化され、WebページのURLを読み込み、AIを通じてチャットボットやナレッジベースの自動対応に活用できるようになりました。登録情報がなくても、AIが必要な情報を自動的に判断して提供できる時代がすぐそこまで来ています。

ぜひ御社でもこうした技術を導入し、社内ナレッジの強化やカスタマーサポートの効率化に役立てていただきたいですね。また、リードスコアリングの精度向上も進んでおり、HubSpotの新機能により、マッチング度合いと行動データを組み合わせて、精度の高いリード評価が可能になりました。これにより、サイト内の行動データから購買意欲を正確に見極め、次のアクションに繋げることが可能になります。

千田氏:最終的な目標は、お客様一人ひとりに最適なパーソナライズ体験を提供することです。このWebサイトを「最高のセールスパーソン」として、営業活動を支援し、お客様のニーズに先回りして対応する仕組みの構築を目指していきます。

また、デジタル技術の進化に伴い、情報発信のプロセスも変革が求められています。従来のカタログ制作を起点とする手順を見直し、まずLPで情報を発信し、反応の良い内容をカタログに活用するといった柔軟なアプローチも取り入れ始めています。

これらの取り組みを通じて、お客様のニーズに迅速に応える体制の強化を図ります。また、AIソリューションとWebサイトを連携させ、お客様視点に立った情報発信とコミュニケーションの実現を推進してまいります。

※記事中の部署名、役職名等は取材時のものです。

We are HubSpot LOVERS

ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。

HubSpotのことならお任せください

お問い合わせフォーム