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今回は音楽事業、芸術祭イベント事業、学童事業と三本の柱で函館を盛り上げている株式会社ヒトココチの福田琢磨さんにお話をお伺いしました。
幅広い事業を展開するヒトココチさんが、どのように今のお仕事をするようになったのか、どういった経緯でHubSpotを使うに至ったのかをお伺いし、HubSpotとの意外な共通点が見えてきました。
私は北海道の根室市出身で、18歳の時、教育大函館校に入学するため函館に出てきました。
当初は教職を目指していたのですが、在学中に仲間と一緒に和楽器バンドをはじめ、そのまま起業しました。
1998年に函館の陣川にある農業倉庫を借りて任意団体として活動が始まり、2000年には合資会社ひのき屋というバンド名と同じ名前で会社をスタート。そのうちバンドだけではなく、文化活動やイベントをやることになり、株式会社ヒトココチとして組織変更しました。
初めは全員で音楽活動をしていたのですが、そうしたら次の仕事がなくなることに気づいて、2004年に自分はバンドを辞めて事務所で仕事するようになりました。
その後、はこだて国際民俗芸術祭というイベントに携わったり、2014年頃から学童保育にもかかわったりするようになりました。
私も札幌出身でサッカーをやっていたので、年に何度か試合で函館の日吉の方に行っていました。山の方ですよね?
そうそう。山の中です。弊社の代表が函館の西部地区のサッカー少年団の監督をしていますよ。
そうなんですね!
学生の頃のバンド活動からそのまま会社にされたというのが非常に興味深いのですが、バンドだけではなく、事業活動をしようと思ったのは何かきっかけや理由があるのでしょうか?
理由はほとんど後付けです。やっているときは無我夢中で、当時は今みたいなサブスクもなく、音楽で食べていくのなら東京のレーベルに所属して有名になるというのが一般的でした。それを外れて地方の田舎で音楽がアートビジネスになり得るのか、という実験をやっていた感覚です。
とにかく食べていかなければいけないので、学生時代から保育園や幼稚園で公演活動したり、函館の少年刑務所に慰問に行ったりしていました。交通費として少しお金はいただいていて、当時まだ学生だったので「これ続けていたら食べていけるのではないか」と大きな勘違いをしていましたね。
実際やってみるとなかなか厳しくて、北海道内の小学校をまわったり、教育委員会に掛け合ったりしながら低空飛行で続いていた感じです。
3年後とか10年後とかの立派なビジネスプランを考えていたわけではなく、自分たちが好きな音楽で生きていくためにはどうしたら良いのかをずっと模索していました。
最初に保育園・幼稚園からスタートしたとお話をしましたが、園児って面白いことをしないと反応してくれない。だから、子供や人が面白いと思うことって何だろうとずっと考えていました。
その延長に、はこだて国際民俗芸術祭があります。元々はクロアチアのザグレブで行われていた芸術祭を輸入したもので、みんなが喜ぶイベントにしたいという想いから始まりました。子供が喜べば、親もおじいちゃんおばあちゃんも嬉しい。
人に喜んでもらうことは端的に言うと「ファンを作る」ということ。ファンを作るからこそ、お金もまわるし、知名度も上がって、事業として成立することを実感しました。
特に地方だと「周りと同じ生き方をしなければいけない」というしがらみも多く、「そうじゃない。世界は広いし、いろいろな生き方がある。当たり前だと思っていることは当たり前じゃないんだ」と伝えたかった。
そういう思いがあったから、音楽だけじゃなく、イベントや学童保育の経営に繋がっているのだと思います。
音楽は一つのツールとして、ご自身のやりたいことが拡張していって形になっているのですね。
当事者って一生懸命何かをやっているときは自覚がなくて、あとで振り返って俯瞰的に見るとそうだったなと気づきます。
ひのき屋のプロフィール写真
はこだて国際民俗芸術祭についてもう少し詳しく教えてください。クロアチアから輸入したとのことですが、そのイベント自体はどういうものですか?
たまたま函館にクロアチアの関係者がいたので、2002年に現地のイベントに行きました。
クロアチア首都のザグレブにあるイェラチッチ広場という、札幌で言うと大通公園みたいな場所で開催されます。そこに世界の民族舞踊や民俗音楽のアーティストが集まります。
夏休みの大学の寮に海外アーティストが集まって、夜通し音楽したりお酒を飲んだりしていましたね。日本にはそんなフェスティバルはなかったので、とても強烈な体験でした。
2008年、ひのき屋結成10周年で何かやりたいと思ったときに、元町公園が改装されて立派になって運命だなと思いました。
このフェスティバルの特徴が現地集合・現地解散で、現地の滞在費は主催者もちというものでした。「絶対失敗する」って言われながらも、ニュージーランド領のニウエ島や韓国、ブルガリア、日本国内で活躍している外国人アーティストも呼んで、第一回目は無事成功。
元町公園でやることにも意味があって、函館市民にとっては伝統的な建造物もある自慢の場所で、そこに世界のアートや音楽が集まって、おいしいものも食べられる。その期間だけは、何もない公園に世界が出現する。
正直最初はお金儲けにはなりませんでしたが、好きなことをやっていくうちに形になってきました。
ありがとうございます。すごく楽しそうなイベントですね。
当たり前に楽しいって大事だけど、難しいですよね。海外だと騒げることも、日本だと「ちゃんとしなければいけない」みたいな空気がある。
やりたいことをやっていたら、人もお金もついてくるということをメッセージとして伝えたいです。
はこだて国際民俗芸術祭のWebサイトより
お話を伺って、ヒトココチさんはどうしてHubSpotを使っているんだろうと思っていたのですが、なんとなく分かりました。
領域は違いますがHubSpotも毎年INBOUNDというカンファレンスをやっています。もちろん勉強をする機会ではあるのですが、HubSpotファンが集まるお祭りみたいな雰囲気なんです。
HubSpotの創業者のブライアンが「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」という本を出しているのですが、彼自身もバンドマンで、人を楽しませるなど、人を中心として物事を考えるマーケティングをしているので、そういうところがヒトココチさんとマッチするのかなと感じました。
それはあるかもしれませんね。我々はお客さんの流れとか空気を読んで、「ウケているのかどうか」にすごく敏感です。
商売とはファンを作ることです。
僕の人生の前半戦はくだらないことに時間を使ってしまったけれど、今考えると無駄じゃなかったと思えます。
相手が欲していることとか、何を面白いと感じるのかということを、答えのない中でひたすら考えていた時間でした。もしかしたらHubSpotの創業者の方も同じかもしれません。
HubSpotが面白いなと思うのは、ハンドレッドさんみたいなパートナーの方がたくさんいること。
事業って一人では何もできなくて、人が集まるところに情報が集まってお金が集まるということを、最初に農業倉庫を貸してくれたオーナーに教えてもらいました。HubSpotの応援団がたくさんいて、商売をより良くしようというだけではなく、もっと深いところで何かをとらえようとしているんだという感じがしました。
HubSpotのどこがいいかと聞かれると「人間臭いところ」だといつも答えます。
だからこそHubSpot沼があって、はまっています。
まさに、私もその一人です。
HubSpotの人間臭さとか哲学とかに出会ったときの衝撃は大きかったです。HubSpotの社員も代理店パートナーも、心の底から「これがいい」と思っておすすめしていて、正のスパイラルがまわっている。いろんな人を巻き込んでどんどん大きくなっていく。
相手にちゃんと向き合って、その人が必要なものを必要な状態で提供しようというインバウンドマーケティングの考え方ですね。押し売りじゃなくて、寄り添う。
そこが徹底しているので、どんどん沼にはまってしまいます。笑
時代のタイミング的なものもあるかもしれませんね。
今まで当たり前だった押し売りにみんな飽き飽きしてきたところにHubSpotがいいタイミングでやってきた。
私は、現場で汗をかいたり傷ついている人の役に立てるサービスであってほしいと思っていて、HubSpotにはその可能性があると信じています。
うちみたいな従業員20人ぐらいの会社は特に難しくて、人情も見える、けどツーカーではいかない。仕組みを作って自動化できるところは自動化して、自分たちの仕事に集中できるようにしなければいけない。
今はいろいろなSaaSを入れて試しているところです。
現在はどのようにHubSpotを使われていますか?
ほとんど取引の管理に使っています。単純なお問い合わせなのか、見積もりを出していいのか、契約書を出していいのか、現場に回していいのかという見える化のために使っています。
元々EVERNOTEですべて管理していたのですが、それでは管理しきれなくなってしまって。
HubSpotが良かったのは同時にWebサイトを作れるところ。別々のツールを組み合わせて使ってしまうと、それぞれ別々の脳みそが動きますが、全てHubSpotで完結できて、とても頭の中が軽くなりました。
HUG(HubSpot User Group)を見ていても、皆さんいろんな使い方をされていて、まだまだ知らない使い方がありそうだなとワクワクします。
HubSpot社の成り立ちにも通じるのですが、たとえばSalesforceはもともと大手を対象にしていて、一社の単価が高く成長しやすいのに対して、HubSpotは中小企業向けだったのです。
中小は一人が担当しなければならない領域が広いので、画面を見て一目で「何ができるのか」がわかる必要があります。
そういったHubSpotのこだわりもマッチしたのかもしれませんね。
ただ悩みもあって、自分たちもいい歳になってきて、いつまで続けられるかという問題が出てきています。先々の展開をどうしようか考えたとき、そこにどうHubSpotを活用していけるか、という課題意識はありますね。
学童で「CODMON」という子供の管理や登園の管理をするSaaSのシステムを使っていて、どうすればスタッフが楽になるのか、それをエンジニアが支えているのが伝わってくるサービスです。
我々より上の世代は新しいサービスに抵抗があって、面倒くさいと思ってしまうけれど、10年後20年後のことを考えて今のシステムを組んでいるので、若い人たちが食いついてくれるようなモノじゃないといけない。
「CODMON」は20代30代の職員が自分たちで調べて、僕の知らない機能まで使ってどんどん効率的に使えるようになっています。こういうのが理想だなと思います。
少し前まではシステム管理者しか分からなかったことが、誰でも自分でできるようになったのはとても望ましい状態です。
10年、15年後、今やっているひのき屋事業、芸術祭事業、学童保育事業のなかで、ひのき屋事業、芸術祭事業はまだ辞めることができる。でも学童保育は地域に対しての責任があるから、中途半端には辞められない。若い世代に渡したときに、HubSpotがあればやりたいことがやれる!という状態になったらいいですね。
HubSpotとヒトココチさんの共通点が見えて、福田さんがなぜHubSpotを選んだのかという理由が腑に落ちて、とても面白かったです。
ありがとうございます。繰り返しになりますが、私がHubSpotに望んでいることは、現場で汗を流している人たちが喜ぶシステムになってほしいということです。
今はまだ管理部門の人たちが会社を支えていますが、最終的には管理部門が要らなくなる会社がいい会社であり、管理部門を省力化してもっとクリエイティブなことができるのが理想です。
そこにHubSpotがうまくコアシステムとしてはまっていくといいなと思っています。
ありがとうございます。HubSpotの社員の方もとても参考になると思います。
偉そうに言っていますが、HubSpotを愛しているから言えるんです。
それはとても感じます。
ワクワクしますよね。ワクワクすることはいいことですよね。
そうですね。HubSpotユーザーの皆さんも同じように「ワクワクする」という言葉をよく使われます。元々HubSpotはそこを考えて作られているものなので、それが皆さんに伝わっているのだと思います。
ワクワクは一生懸命守らないと失われていきますからね。
そうですよね、僕もそこは危惧しています。
組織が大きくなって、従業員が入れ替わったり、創業者が会長になったり、時代の流れで変わっていくものがあって、僕や皆さんが持っているワクワク感が今後どうなって行くのか。
わかります。どんな組織でも、当たり前のことは不断の努力で守られているということを理解できないと失われてしまいます。
答えがない事なので面倒くさいと感じてしまいますが、「ワクワクって何だろう」「ワクワクってどうやったら作れるんだろう」という話ができる仲間がいることが大切ですね。
とても大切なことですね。今日はありがとうございました。
※記事中の部署名、役職名等は掲載当時のものです。
ビジネスの成長プラットフォームとしての魅力はもちろん、
HubSpotのインバウンドマーケティングという考え方、
顧客に対する心の寄せ方、ゆるぎなく、そしてやわらかい哲学。
そのすべてに惹かれて、HubSpotのパートナー、
エキスパートとして取り組んでいます。
HubSpotのこと、マーケティング設計・運用、
組織の構築など、どんなことでもお問い合わせください。
福田さんの自己紹介とヒトココチさんの事業内容を教えてください。